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掲載日:2021年3月2日

執筆担当:藤田・南

 障碍のある人たちの創作活動を支援する「特定非営利活動法人障碍者芸術推進研究機構~天才アートKYOTO ~(通称:天才アートKYOTO)」さん。今回は副理事長の重光さんにお話を伺いました。

団体を設立したきっかけを教えてください

 京都市立の総合支援学校での取組がきっかけです。自閉症でストレスをコントロールできず、取り乱してしまう生徒がいました。その生徒を注意深く見ていると、折り紙や描画など、創作的な活動をしているときは黙々と集中して取り組んでいたのです。出来上がる作品も素敵なものばかりでした。周りに目を向けると同じような生徒が何人もいました。その時、創作活動は、ルールのようなことを気にせず、生徒たちがのびのびと自由に自分を表現できる場なのだと考え、決められたカリキュラムで進めていた美術の授業を自由創作に変え、生徒たちが主体的に創作活動に取り組めるようにしました。授業形態を変えてから、素晴らしい作品がさらに生まれました。卒業後も彼らが創作活動を続けられ、能力や才能を最大限に活かせる場をつくりたいと思い、関係者の方々と共に団体を立ち上げました。

現在に至るまでに嬉しかったことを教えてください

 創作活動を通して作家さんが生き生きと張り合いのある生活を送っていることです。

 現在は41名の方が作家として登録しています。引きこもり状態だった方が「天才アートKYOTO」での活動をきっかけに自信を取り戻し、社会復帰につながったことがありました。少しずつ社会と接点を持っていくことで、徐々に自信や意欲が高まり、良いサイクルが生まれているのだと思います。創作活動が人生の立て直しの場ともなっていると感じ、そのような機会を多くの作家さんに提供できていると思うと嬉しいです。

周囲や自分自身の変化について教えてください

 団体としては着実に活動の幅を広げています。設立当初は、制作場所の確保と展示会の開催から始まりました。その後、会報誌の刊行、オリジナルグッズの制作・販売、作品アーカイブの公開など徐々に積み上げてきています。事業の展開とともに共催のお声かけをいただくようにもなりました。以前に比べて障碍者アートへの理解者やファンが増えており、成果や手応えを感じています。

 現在アトリエで所蔵している作品数は約3700点になります。この10年間で作家さんや作品の数が増え、活動の土台ができてきたことに加え、運営のノウハウも少しずつ培われてきています。20年、30年と続けていった先には回顧展などの企画も開催したいです。

現在の活動への想いを教えてください

-----運営スタッフさんのほとんどがボランティアだとお聞きしました。何がモチベーションになっているのでしょうか。

 個々の作品・作風がおもしろく、毎年のように新しい作家さんが現れる楽しさがあります。一般的に芸術作品の中には、論理的なものや構成が緻密に計算されたものもあります。しかし、障碍のある人が描いた作品は下書きもせず直感によるものが多いです。自由奔放で、独特で、唯一無二の作品に魅力を感じます。作品を見た芸術大学の先生が「衝撃を受けた」「学生への指導方針を変えた」とその作風に驚嘆していたこともありました。

学生ボランティアへ思うことや期待していることを教えてください

 ボランティアやアルバイトに限らず、同じところで長く継続することも、あらゆるところで様々な経験をすることも、今後の人生で役に立つと思います。「天才アートKYOTO」に来た学生ボランティアは、作品のレベルの高さに驚いていました。自分の意思に従い自由に創作する作家さんをみて「障碍のある人を補助・支援したい」という考えから、能力や才能を活かす仕組みが大事だと気づくようです。ボランティアとして来た学生はみんな「来てよかった」と言って卒業していきます。

 卒業後、職場で障碍者アートが話題になったとき、「天才アートKYOTO」での経験を話したと報告をくれた学生もいました。ここで見聞きし、経験したことを社会へ出てからも発信してもらいたいと同時に、さらに学びを広げていってもらえると嬉しいです。

学生時代のエピソードやこれまでの経歴を教えてください

 バイトや遊び、旅行のほか、他大学の学生と知り合ったり、様々な人と時間を過ごしたり、大学の外で過ごすことが多かったです。学生時代は人生の中で1番自由に動ける時期なので、いろいろなことにチャレンジしていました。

 

-----当時から福祉や芸術に関心があったのですか?

 子どもの頃から創作活動は好きでした。大人になるにつれ、アートを鑑賞したり評価したり、学ぶことの方が好きになっていきました。大学の専攻と福祉は全く関係がありません。小学校教員になった後、特別支援学校に異動したことをきっかけに携わるようになりました。

今後の展望について教えてください

 目標は、活動をさらに発展させて作品を世界に発信していくことです。特に北米や欧州は日本に比べてはるかに現代アート作品としての評価や人気が高く、市場も拡大しています。近年は、コレクターが日本の障碍者アートのおもしろさに注目し始めています。そこに参入していくためには、英語版ホームページの製作やSNSでの発信、メディアを使った作品販売などが必要です。海外からもノウハウを学び、世界中の人がアクセスできる仕組みを整えていきたいと思っています。

インタビューを行った学生の感想&メッセージ

【藤田さん】

 アトリエ見学で個性豊かな作品に触れながら取材できたことは貴重な体験でした。これからの時代において個々人の隠された才能を引き出せる場は、より重要になってくると感じました。美術や芸術の世界には正解がなく、100人いれば100通りの作品になるように、人の生き方もそれぞれあって、他者と比較せずにありのままの自分を大事にしていこうと思いました。

【南さん】

 元々学校だったその場所は、当時使われていた道具を使ってありのままの自分を表現できるアトリエになっていました。作家さんを支えるボランティアの方の熱意や考え方に触れ、主体的な学びこそが自信や成長意欲につながることを学びました。また、アートへの興味がますます湧く取材となりました。今回教えていただいたことを自分の中に留めるだけではなく、周りに発信していきたいです。

今回インタビューを行った団体

団体名:特定非営利活動法人障碍者芸術推進研究機構~天才アートKYOTO~

所在地:〒605-0811 京都府京都市東山区小松町130

HP:http//www.tensai-art.kyoto

SNS:https://www.facebook.com/tensai.art/

 

[団体の理念・活動概要]

 絵画や美術的な制作に興味関心・能力のある人たちが、伸び伸びと活動できる場所を確保します。その作品などの展示と、創作過程や作品の評価研究・複製画の販売・リース、デザイン活用推進などを行います。