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掲載日:2021年2月24日

執筆担当:竹下・張・登岸

 毎年、桂川全域の一斉清掃を行っている「桂川流域クリーンネットワーク」さん。今回は一斉清掃の指揮をとる実行委員長の大石さんと、河川レンジャーの仁枝さんにお話を伺いました。

団体を設立したきっかけを教えてください

【大石さん】

 以前は拠点ごとに分かれて桂川の清掃を行っていました。2007年に大型台風18号の影響で桂川が氾濫し、川に溜まっていた多くのごみが浮き上がりました。河川レンジャーの田子さんと仁枝さんがごみ問題を深刻に考え一斉清掃を呼びかけたことが「桂川流域クリーン大作戦」の始まりです。

 2008年から活動を始め、第4回目となる2011年に有志で桂川流域クリーンネットワークを設立しました。「桂川流域クリーン大作戦」には周辺の住民や企業、自治体など桂川に馴染みのある団体がボランティアとして参加しています。

 

-----拠点ごとではなく、一斉に行うのはなぜですか?

【大石さん・仁枝さん】

 水質汚染の原因は生活排水や地域住民から出るごみがほとんどです。現在、世界的に海洋汚染が問題となっていますが、それらは川に捨てられ、海へ流れ着いたプラスチックごみが原因です。プラスチックごみは海洋生物に悪影響を与え、それを食べる人間の体にも影響を与えています。川ごみが流れていかないよう上流の桂川で食い止めるためには、一か所だけではなく全体を一斉に清掃することが重要なのです。

 

-----「桂川流域クリーン大作戦」の開催を呼びかけた「河川レンジャー」について教えてください。

【仁枝さん】 ※団体概要欄に「河川レンジャー」のパンフレットを掲載しています。

 活動の一番大きな目的は「子どもたちに美しい川を残すこと」です。河川レンジャーは川と人、人と地域をつなぐ役割を担い、行政・地域・企業・専門家をつなぐ「橋渡し役」として、地域住民と交流を持ちながら川の管理や整備を行っています。地域・自治会から文化や技術を学び、豊かな桂川をなんとしても未来につながなければ、という思いで活動しています。現在、地域住民や行政との連携が順調で、災害時における防災マップづくりや避難先の確保など、地域のつながりが防災でも役立っています。

現在に至るまでに嬉しかったことを教えてください

【大石さん】

 「桂川流域クリーン大作戦」の参加者数が年々増加していることです。当初約500人だった参加者が、第11回には約3600人まで増えました。同時に活動エリアも拡大しています。現在では23箇所に分かれて実施しており、上流から下流までほぼ全域を清掃することができています。

周囲や自分自身の変化について教えてください

【大石さん】

 参加者のごみに対する認識が変化しているのを感じます。私自身も、若い頃から自然に親しむことは多々ありましたが、環境問題や河川清掃には全く関心がありませんでした。「桂川流域クリーン大作戦」に参加したのも偶然です。当時、桂川の河川敷で少年野球の指導を行っており、利用させてもらっていることへのお礼の気持ちから参加しました。その後も継続して参加し、回を重ねるごとにごみに対する認識が変化していったんです。そして桂川への想いもますます強くなり、現在では実行委員長を務めるようになりました。

 

-----設立後、活動の理念に「生態系の保全」が追加されたのはどのような経緯ですか?

【大石さん・仁枝さん】

 桂川は様々な植物や生物が生息しており、とても自然が豊かな川です。近年、わずかではありますが外来種の生息が確認されています。一斉清掃によって人間が生活する街や環境を綺麗に保つだけでなく、植物や生物の環境保全も含めて考えることで、自然の生態系を維持し、より桂川を綺麗にしていきたいという思いです。

現在の活動への思いを教えてください

【大石さん・仁枝さん】

 川や街中にごみを捨てるのは他でもない人間です。清掃活動を行うことももちろん大切ですが、ごみを出さない、捨てない意識を持ってもらいたいです。環境問題に関心のない人たちに働きかけていくことが私たちの大事な役目であり課題だと感じています。

 最近はプラスチック製レジ袋が有料化され、亀岡市では使用を禁止する条例が制定されました。プラスチック製品は大変便利で、全てをなくすことは非常に難しいですが、プラスチックごみを減らしていく活動も展開していきたいです。

学生ボランティアに対して思うことや期待していることを教えてください

【大石さん・仁枝さん】

 現在、立命館大学や龍谷大学の学生と一緒に活動しています。スタッフが高齢化する中、学生が参加してくれることで生き生きとした活動になっています。学生には、ただごみを拾って川や街を綺麗にするだけではなく、その地域の歴史や文化を知り、学ぶ機会にしてもらいたいと思っています。

 ボランティア活動は誰かに指示されたり、与えられて行うものではありません。活動に参加した学生が社会人になったとき、「ヒゲのおっちゃん頑張っているかな?」と思い出して、時間のあるときに来てくれると嬉しいです。

学生時代のエピソードやこれまでの経歴について教えてください

-----以前も環境に関わるお仕事をされていたのですか?

【大石さん・仁枝さん】

 仕事は環境とは全く関係のない業種です。先にお話したように、河川清掃には桂川を利用していたことや知人の声かけなどがきかっけで参加しました。現在実行委員長や河川レンジャーとして活動しているのは、子どものころ自然に親しんだ経験や思い出が根底にあるのだと思います。最近の子どもたちは危険性の心配から川で自由に遊べなくなっていますが、今後も自然に親しめる環境を残しておきたいです。

今後の展望と個人的な目標を教えてください

【大石さん】

 「桂川流域クリーン大作戦」を今後も続けていきたいです。いずれは若い人に団体を引っ張っていってもらいたいと思っています。個人としては、7月1日から7月31日まで、河川愛護月間なので、7月7日の「川の日」に全国で一斉に河川清掃を行うことが夢です。各地でイベントは行っていますが、全国規模で川を大切にする取り組みはありません。地域によって気候や土地の特性が異なるため、桂川だけでも足並みを揃えることが難しい状態にあります。ですので「夢のまた夢」かもしれませんが、将来実現できると嬉しいです。

【仁枝さん】

 「環境の日」という国民の祝日を作りたいです。現在、国民全体で環境を見直す機会がありません。環境を汚さないよう自動車を使わず、川の恵みを知り、体験し、自然に親しむ日にしたいです。長い歴史の中で人間は川を汚してきました。川や環境を大切にする日を作ることは、そのお詫びとしてできる最大の貢献だと思っています。これは河川レンジャーになったときからの目標です。

インタビューを行った学生の感想&メッセージ

【竹下さん】

 私は、「桂川流域クリーン大作戦」を開催する一番の目的は、普段からゴミを捨てないよう参加者の意識を変えることだと感じました。一斉清掃を行わなくてもゴミが出ない街にすることが理想的であり、そのためにも世代間でゴミ問題に対する意識の差を生じさせないことが重要だと思います。団体さんは学生や若者の参加を強く望んでおられるので、多くの学生にこの活動を知ってもらいたいです。

【張さん】

 河川清掃は川をきれいにするだけではなく、参加者や地域住民の意識を変えることも目標としていることが今回の取材を通じて分かりました。また、プラスチックゴミを減らすためには、市民による活動だけでは足りず、政府や企業からの働きかけと行動の変化が必要であることも感じました。新型コロナウイルス感染症の感染状況が収まったら、「桂川流域クリーン大作戦」に参加したいです。

【登岸さん】

 最も印象に残っているのは何といっても目標を語っているときのお二人の嬉しそうな表情だ。スケールが大きくて実現することは簡単ではない。しかし目標を語るお二人の表情からは本気で実現したいという気持ちが伝わってきて、素直に応援したい気持ちになった。お二人のように大きな目標を掲げ、それを積極的に言葉にしていくことが大切だと思う。

今回インタビューを行った団体

団体名:桂川流域クリーンネットワーク

所在地:〒616-8167 京都市右京区太秦多藪町48-35

HP:

SNS:https://www.facebook.com/桂川流域クリーンネットワーク-339624292791290

 

[団体の理念・活動概要]

1.清掃による河川美化。

2.活動を通じて美化意識を高め、マナーの向上を図る。

3.ゴミのポイ捨てを無くし「ゴミ持ち帰り運動」を展開。

4.プラスチックごみは生き物の生態系を脅かす問題です。ペットボトルやレジ袋などを川に捨てない活動を展開。

5.外来生物は日本の古来から棲息する生き物を減少させます。外来生物の駆除を実施します。

 

[河川レンジャーパンフレット]

河川レンジャーチラシ.pdf
PDFファイル 1.6 MB
河川レンジャーパンフレット.pdf
PDFファイル 2.9 MB