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掲載日:2022年3月10日

記事タイトル「コーヒー豆カスの回収からはじまるエコ活動」

執筆:粟田口・植田・中島・山本

 京都市には2900ほど橋が存在しますが、100年を超えて道路橋として現存するものは七条大橋のみであり、鴨川に架かる中で最古となります。今回は七条大橋の清掃活動を行っている「七條大橋をキレイにする会」の活動メンバーである小林さんにお話を伺いました。

〈団体の設立〉

団体設立のきっかけ

 小林さんは、市民が主体となって景観まちづくりを進めていくことを目的に活動されているNPO法人京都景観フォーラムさんで活動していたときに、七条大橋の近所で「ギャラリー・集酉楽(しゅうゆうらく)サカタニ」を営む、現団体の代表である酒谷さんのお兄さんから「七条大橋100周年のお祝いをしたい」という相談を受けました。小林さんはそれを機に七条大橋のことを知ったそうです。小林さんは大学の時に土木工学を専攻していたので関心を持ち、仲間たちと協力して七条大橋100周年のイベントを開催しました。

 しかし、イベントを行ったところで、「京都の景観に何か残せたのか?」と気にかかったそうです。そして、酒谷さんと相談し、小林さんは再び七条大橋に関することをやりたいと考え、七条大橋周辺に草が生い茂っていたことから、七条大橋にちなんで、7月7日に草抜きを行いました。

 最初は12人が集まり、1時間ほど活動しましたが、草抜きが全て終わることはできませんでした。翌月以降も7日に清掃活動を継続するうちに、参加者が七条大橋の魅力に気づいていき、今に至ります。

団体の名前はいつ付けられたのか

 毎月7日の清掃活動を続けていく上では、ゴミ袋やバケツなどの購入が定期的に必要となってきます。小林さんは、活動時の費用の負担や、いろんな人に活動のことを知ってもらうためのぼりの啓発グッズを作成する方法などを考えるようになりました。

 そして、2016年に東山区の「東山区まちづくり支援事業助成金」を出していることを知りました。申請するには活動団体としての名前が必要であったため、当時の活動メンバーで「七條大橋をキレイにする会」と名付けました。古い漢字の「條」が使われているのは、竣工時の親柱に書かれていたことや、古くから存在し、人々の生活を支えてきた橋をねぎらいたいという思いが込められています。

七条大橋の歴史

 七条大橋は、明治末期の「京都三大事業」によって誕生しました。これは、明治になってから京都の人口が大幅に減少したことが背景にあります。京都の活気を取り戻すべく、「京都三大事業」が始められ、その事業の一つが市電による社会インフラの整備でした。その市電のルートに七条大橋も入っており、市電を走らせるために強固な橋であることが求められ、七条大橋は鉄筋コンクリートづくりのアーチ橋となりました。

 当時の日本は木や石でできた橋が主流であり、西洋風である鉄筋コンクリートの橋は珍しいものでした。四条大橋も同じ経緯で作られていたため、当時の四条大橋は七条大橋と同じデザインでしたが、1935年の鴨川大洪水の影響で取り壊されることになりました。そのため、七条大橋については、鉄筋コンクリートアーチ橋の技術が入ってきた当時のままの姿で、現在まで残されています。

七条大橋のデザインと魅力

 橋は安全性の確保が第一であり、デザインは注目されにくい傾向にあります。しかし、七条大橋は土木技術者だけでなく、建築家も関わっている点でも貴重です。七条大橋は、台湾総督府などの設計に関わった、建築家の森山松之助さんがデザインしたものであり、「パリのセーヌ川に架かっていそう」と小林さんは仰っていました。七条大橋を見る際には、鴨川のところまで降り、そこから橋全体を見渡すのがオススメであり、橋の側面に見えるアーチも見どころとなっています。

〈団体の活動〉

団体の活動内容

活動写真

 毎月7日に実施される橋の清掃活動がベースとなっています。この活動の目的は、七条大橋の近くに住む地域の人に、七条大橋の魅力を知ってもらうことです。また、七条大橋の近隣地域以外の方にも応援してもらうイベントとして、2017年から2019年までの3年間、七条大橋のライトアップイベントも、8月の「京の七夕」や「橋の日(8月4日)」に合わせて実施していました。

 さらに、本来の目的である「なぜ活動の参加者が七条大橋にほれこんでいるのか」を繰り返し丁寧に伝える場として、ミニ講座や講演活動、YouTubeでは「しちぶり」チャンネルによる動画配信も行っています。このような活動を継続したこともあって、七条大橋は2019年に国の登録有形文化財に登録されました。

アイデアが生まれる意見交換会

 毎月の清掃活動後は、コロナ前であれば意見交換も行っていました。例えば、団体の代表である酒谷さんの運営するギャラリーにて交流会を行ったり、東山区だけでなく、他の助成金の申請について話し合ったりしていました。これまで実施しているライトアップイベントや、2017年のフォトコンテスト「七條大橋の魅力を写そう」のアイデアも、意見交換会から生まれました。

 また、前述したライトアップイベント3年目の際には、従来のやり方とは異なるアイデアも出されました。そのアイデアは、これまでライトアップに関わっていらっしゃった電気会社さんによるもので、有形登録文化財の登録のお祝いの気持ちを表現したいという思いから、色が変わるライトアップに挑戦してみようというものでした。活動参加者との議論の結果、ライトアップ期間中の1日を色の変わるライトアップが実現しました。

〈活動への思い〉

七条大橋が好きな人を増やしたい

 「なんか掃除をみんなですると気持ちいいんですよ。家の掃除は全然楽しくないですけど。橋に月1回集まって皆でなんとなく他の人の気配を感じながら掃除をしているのが楽しい。」と小林さんは仰っていました。そんな清掃活動の目的は七条大橋が好きな人を増やすことだそうです。特に七条大橋近隣の人々に魅力を知ってもらい、橋が好きな人の輪を広げたいと言います。

 

手が震えるほどだった、国の有形登録文化財登録

 活動を通して印象的だった出来事を伺ったところ、「全ての瞬間が。でも手が震えるほどだったのはやっぱり国の有形登録文化財の発表を聞いた時」だと仰っていました。これまで関わってこられた方々の思いや取り組みが実現したことや、様々な方と「良かったね」と喜び合えたことがとても嬉しかったそうです。

 活動を始めた当初、小林さんは有形登録文化財への登録がひとつのゴールだと考えていました。しかし、有形登録文化財の登録後、それは通過点でしかなかったと感じられました。なぜなら、有形登録文化財への登録を目指して築いた人との繋がりは、その目標を達成した後も形を変えながらも残っているからだそうです。

代表の酒谷さんについて

 「今では人との繋がりが財産だ」と仰っていた小林さん。「七条大橋を好きな人の輪」を築く上で、代表である酒谷さんの人柄についても話してくださいました。小林さん曰く、酒谷さんは、誰にでも愛情を持って接するということを体現している方だと言います。例えば、もし困ったことがあれば見返りなくすぐに手を差し伸べてくれるそうです。きっとそのような人柄が、団体に関わる素敵な人の輪を作っていっているのでしょう。

〈課題・目標・メッセージ〉

今後の課題

 課題として、SNSの発信力が弱いことを挙げられていました。これは「七條大橋をキレイにする会」が、対面での人との関係を大事にしているからこその弱みでもあります。現在は、活動の参加者の中で広報の得意な方が、「七條大橋をキレイにする会」のFacebookでの発信を担っています。今後は、もし参加者の中にInstagramに強い方がいれば、Facebook同様に協力していただけると嬉しい、と小林さんは考えているそうです。

 また、コロナ禍の影響もあり橋のライトアップができていないことも1つ課題としてあるそうです。橋のアーチを美しく映えさせ、普段七条大橋を訪れない人をも魅了するライトアップができるようになることを、活動メンバーは心待ちにしています。

今後の目標

 「今後の目標は橋が愛され続ける存在であること。」と、小林さんは力強く答えられました。橋というものは、たしかに人が川を渡れるようにするもの、ただそれだけのものであるかもしれません。しかし、橋が地域の人々にとって管理され、それを維持していくためには、その橋を愛する気持ちが不可欠なのです。多くの人が七条大橋に愛着を持ち、自身で関わりながら維持管理を行うことで、この橋が今後も愛され続けることを願っているそうです。

 また、七条大橋の活動は、先進的な活動として紹介されるなどの影響を与えており、このような他の活動にも良い影響を与えられる存在でいることも1つの励みとなっているそうです。

京都市民や学生へのメッセージ

 京都に住んでいる市民の方に向けて、「七条大橋の魅力に気づいてほしいから一度来てほしい。また、自分の周りにも愛着を持てるインフラを探して、見つけてほしい。」と、小林さんは仰いました。

 また、学生に対しては、「ちょっとでも関心を持ってくださったら、ぜひ活動に参加して、逆に私たちにどんな関心をもっているのか、どんなことに興味があるのかについて教えてほしい。つながりの輪の一つになれたら」、とメッセージを残されて、インタビューを終えました。

参加プログラム

活動先団体名

七條大橋をキレイにする会

団体の理念・活動概要

 私たち七條大橋をキレイにする会は、毎月7日の9時からの七条大橋とその周辺の清掃活動をベースに、これまでライトアップや講演会など、橋の魅力を伝える活動をしています。橋の歴史と価値を皆さんに知らせたい、そして、この橋をねぎらい、大切にしたい。そんな思いを持つ人とのつながりを大切にし、思いが広がっていくことを期待しています。

団体連絡先

住 所:〒605-0993 京都市東山区七条通本町西入日吉町222

電 話:075-561-7974 

SNS:https://www.facebook.com/shitijyoohashi